2.道具としてのスターフェリー

東京国際展示場ビッグサイトは都心のちょっとはずれ臨海副都心にあり、都心へのアクセスはさまざまな方法がある。東京駅や浜松町駅、新木場駅へのバス、新橋駅への”ゆりかもめ”、これらが定番だ。しかし展示会の後など人の流れに付いていくと、信じられないくらい多くの人が都心行きの水上バス(フェリー)乗り場に行くのを知って驚く。15分フェリーに乗れば確かに内陸部に着くが、到着後最寄りの浜松町駅まで10分も歩かねばならない位下船する日の出桟橋は不便なところにあるのを知っているからだ。
おそらく「単に船に乗るのが楽しいから」という確信犯的な乗客もいっぱいいるに違いない。日本に住んでいるとそれくらいちょっと船に乗る機会は昨今全くない。
香港も全く同じだ。海をまたいだ香港島から九龍までの行き方で、トンネル経由のバスでもタクシーでもなく、MTR(地下鉄)でもない。スターフェリーを使う客は実に多い。下船する尖沙咀のスターフェリーの港から彌敦道(ネイザンロード)端の端までで暑い中500mも歩かねばならぬのにだ。乗っている人は皆リラックスして楽しそうだ。新聞を読んでいる乗客は少ない。ほとんどが海を見ている。その表情を見ているとこちらまで楽しくなってくる。
日本の近距離用フェリーと香港のスターフェリーの最大の違いは、前者が機械で後者が船だということだ。スターフェリーはとても古い。デッキの色といい剥げた船体のペンキといいさながら骨董品だ。もちろん電自動化されたところなど無い。乗船時や下船時の船と港の渡しなど、船員さんが荒っぽくロープで下ろしたり引き上げたりするのを見ていると、船と言うより海を渡る時に使う道具というざらついた感覚が伝わってきて楽しくなってしまう。香港に旅行に行ったらどこに行かなくてもスターフェリーにのるのが一番のオススメだ。

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